キラルCD-Ph取扱説明書
Chiral CD-Phは、精密に分級した高純度の球状シリカをベースにスぺーサーを用いて、フェニルカルバメート化β-シクロデキストリンを付加した充填剤を充填した高速液体クロマトグラフィー用カラムです。
1.カラムの取扱い
- カラムに強いショックを与えると劣化の原因となりますので、丁寧に取扱ってください。
- カラムの取り付け取りはずしは、圧力計の指示がゼロの状態で行ってください。
2.カラムの取りつけ
- カラムのジョイントは外径1/16インチのチューブ用のメールナットタイプになっています。装置の配管ジョイントが正しく合っていることおよびフェラルの先のパイプがジョイントの奥まで入っていることを確かめてください(図-1参照)。
- カラムを取付ける前に、装置配管内の液を使用する移動相に置換してください。
- カラムは、カラムラベルの矢印の方向に従って取付けてください。
3.分析
3-1.移動相について
- 化学結合型シリカに使用できる溶媒はすべて使用できます。
- Chiral CD-Phの使用可能なpH範囲は3.5-6.5です。カラムの早期劣化を防ぐため移動相のpHはこの範囲を超えないようご注意ください。
水100%の使用は、カラムを劣化させる原因となりますので避けてください。
CAPCELL PAKと違い、アルカリ性移動相は使用できません。
- 移動相は、塩が析出していないことを確認し、十分脱気したのちメンブランフィルター(0.45µm以下)を通して、不溶物やゴミ等を除去してください。カラムインレットフィルターは2µmを使用しています。なお、異物によるカラムインレットフィルターのつまりを防ぐため、ラインフィルターを使用されることをおすすめします。
- 出荷時カラムは、検定時移動相が封入されています。ヘキサン系移動相でご使用される場合、エタノールまたはイソプロパノールで充分置換した後、ご使用ください。
- 一般的には次のような使用方法はカラムを劣化させることになりますので避けてください。
- 移動相の組成の頻繁な変更と相溶性の悪い溶離液へのダイレクトな変更
- カラム入り口圧の急激な変化
- 粘度の高い移動相の使用による高いカラム圧
- Chiral CD-Phの常用最大使用圧は20MPaです。粘度の高い移動相をご使用される場合、低温で測定される場合、圧力には十分ご注意ください。
- Chiral CD-Phで安定した保持時間を得るためには、最短でも3時間のコンディショニングを必要とします。
3-2.試料溶液の調製について
- 試料はできるだけ溶離液と同一組成の溶媒に溶かしてください。
- 溶解力の強い溶媒を使用すると、分離能が低下したりカラム頭部で試料が析出したりしますのでご注意ください。
- 試料溶液中に不溶物が残っている場合は、フィルター(0.45µm以下)でろ過してください。
3-3.光学分割手順
- 温度
室温(25℃)から開始されることをおすすめします。なお、充填剤は80℃以下で安定です。
- 流量
500µL/minから開始されることをおすすめします。
- 移動相
1.非イオン性化合物
イソプロパノール/ヘキサン系、エタノール/ヘキサン系、メタノール/水系、エタノール/水系、アセトニトリル/水系の順で光学分割を試みることをおすすめします。極性有機溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル)の配合比率は、90%から低下させて、目的化合物の保持時間が7-30分の範囲になるよう調整してください。
2.イオン性化合物
20-50mmol/Lリン酸二水素カリウム水溶液と極性有機溶媒の混合液を使用してください。リン酸二水素カリウムの代わりに過塩素酸ナトリウム、トリエチルアミン酢酸でも有効です。アセトニトリル系、エタノール系の順で光学分割を試みることをおすすめします。
3-4 塩基性化合物分析上の留意点
光学分割における塩基性化合物の保持・分離は一般的な逆相系ODSカラムとは作用が異なり、その特性上、当社が設定している規格だけではロット変動の確認が困難なケースがございます。塩基性化合物でご使用いただく際にはお客さまの試料にて複数ロットによるご検討をおすすめします。
4.カラムの保存
- 付属のプラグで密栓し、温度変化の小さい冷所に保存してください。
- 過塩素酸ナトリウムのような無機塩を含む移動相を使用した後、長時間保管する場合は、70vol%メタノール水溶液で置換してください。
5.エンドフィッティングについて
- Chiral CD-Phは図-1に示すような構造のエンドフィッティングを使用しています。フィルターのみの交換はできません。
- 配管方法は図-1に従って行ってください。配管が不適切の場合、特に異種カラムに使用したチューブをそのまま使用される時は、フェラルより先の長さ(図-1のV)が、エンドフィッティングの長さLと異なることが多く、トラブルの原因となります。
L>Vの場合、デッドボリュームを生じ、ピークのブロードニング、テーリングが起こったり、分離が悪くなったりすることがあります。
L<Vの場合、フェラルが密着しないため、液もれを生じます。
したがってカラムの交換と同時にフェラルを交換されることをおすすめします。
※頻繁にカラムの交換を行ったメールナットは、フェラルがつぶれて液モレを生じることがあります。このような場合に強く締めすぎると、ナットの頭部が切れるおそれがありますので早めにフェラルを交換してください。
図-1.カラムの接続
6.トラブルと対策について
高速液体クロマトグラフによる測定時のトラブルには、さまざまな原因があり、そのすべてを列挙することは不可能ですので、ここではカラムおよびその周辺で比較的起こりやすいものを示します。
トラブルの現象 |
原因 |
対策 |
1.カラム圧の上昇 |
異物のつまり 1.移動相、サンプル溶液中のゴミ、不溶物
2.配管内の水あか
3.プランジャーシールの破片
4.サンプル成分の析出
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・フィルターを超音波で洗浄する、または交換する ・移動相、サンプル溶液をあらかじめメンブランフィルターでろ過する
・ラインフィルターを装着する
・配管の清掃とプランジャーシールの交換
・移動相でサンプル溶液を調製する
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2.ピーク割れ、テーリング、ブロードニング |
1.カラムヘッドにボイド(空隙)が発生 2.配管ミスによるデッドボリュームの発生
3.移動相条件が不適切
4.カラムの劣化
※カラムが劣化したり、内部にチャネルが発生した場合、修復は不可能です。
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・配管を一度外し再度接続する ・pH、塩濃度、サンプル量等の検討
・検定用の標準溶液でカラム性能を確認
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3.保持時間が遅くなった、あるいは安定しない |
1.液モレ(ポンプの圧力メーターの動きで判断できます。) 2.移動相条件が不適切
3.カラムの安定化時間の不足
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・ポンプ、配管系の液モレを調べる 2-3参照
・十分な安定化時間をとる
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4.保持時間が早くなった |
1.強酸やアルカリの使用による結合基の切断(劣化) 2.移動相条件が不適切
3.カラムの安定化時間の不足
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2-3参照 ・十分な安定化時間をとる
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Chiral CD-Phは厳密な性能チェックの後出荷していますが、万一不良がありました場合は、お手数ですが弊社もしくは販売代理店までご連絡ください。お取替えします。
ただし、カラムの寿命に関する事項や前記取扱注意事項に従わずご使用された場合は、保証の責を負いかねますのでご了承願います。
商品は、お受け取り10日以上経過した場合、良品受領とさせていただきます。それ以降のお取替えはできかねますので、ご了承ください。
更新 2011年6月21日