逆相モードでは、水/メタノール系等の単純な移動相で分析する場合は、30分程度通液してください。イオンペア剤、緩衝液を含む移動相で分析する場合は、5時間以上、望ましくは一晩通液してください。なお、用いる検出器によって平衡化の時間が異なりますので、ご注意ください。NH2カラムでは、水/アセニト系で糖類等を分析する場合は、4~5時間通液してください。緩衝液を含む移動相で分析する場合(イオン交換モードで使用の場合)は、一晩、通液してください。一般的に、イオン交換の作用を利用した分析の際には平衡化に時間がかかります。
逆相モードでは、通常、水/有機溶媒の混液を移動相とします。有機溶媒の比率を高くすることで保持を小さくすることが可能です。逆に、水の比率を高くすることで保持は大きくなります。また、有機溶媒の種類によって溶出力は異なります。例えば、メタノールに比べアセトニトリルでは溶出力が高いため、多くの化合物において同じ組成での保持は小さくなります。また使用する有機溶媒によって分離パターンが変化するケースもあります。
(参考文献: P.J.Schoenmakers et al, J.Chromatogr. 218, 261(1981))
強イオン性化合物を逆相モードで保持するための手法です。スルホン酸や4級アンモニウム塩は、pH調整でイオン抑制ができないため、塩を加えることで逆相モードにおける保持を大きくします。この方法を塩析法と言います。塩析法には、有機溶媒への溶解度の高い過塩素酸ナトリウムがよく用いられ、添加量は100~200mmol/Lが適当です。
イオンペア法は分析系の平衡状態を利用した分析であるため、以下の点に注意してください。
移動相中の塩が溶質の保持へ与える影響については、ソルボホビック(solvophobic; 疎溶媒性)理論により説明することができます。ソルボホビック理論のモデルでは、疎水性の分子は、極性溶媒中から炭化水素結合相へと追い出されることを想定しています。すなわち、この理論によれば、疎水性相互作用は、極性の溶媒と非極性の溶質および固定相との間の反発力から生じるものとされています。したがって、移動相に中性の無機塩(例えば塩化カリウム)を添加すると、溶質分子間での静電的反発が減少し、溶離液の表面張力が増加するため、塩濃度の増加に従い保持が直線的に増大することになります。
イオン性化合物の保持に対する添加した塩の影響は、中性化合物への影響よりも複雑なメカニズムとなりますが、いずれの化合物も塩の添加により保持が増大します。スルホン酸化合物は、逆相カラムで分析する場合、無機塩やイオンペア剤の添加により保持を増大させて分析します。例えば、界面活性剤の直鎖アルキルスルホン酸ナトリウムは、移動相に塩化カリウム0.5 mol/L程度を添加することにより分析することができます。
この際、塩の添加量は、塩の析出による配管系の保護を考慮すれば、最大でも1.0 mol/Lが限度であり、0.5 mol/L程度の濃度でも、十分な保持と分離が得られることが多いといえます。また、試料が疎水性で移動相の有機溶媒量が多い時、例えばアルキルスルホン酸ナトリウムでも鎖長10以上のものは、有機溶媒への溶解度の高い過塩素酸ナトリウムが使用されることもあります。過塩素酸ナトリウムは、移動相の表面張力の増大による保持の増加効果以外にも、過塩素酸イオンが親水性のイオンペア剤として、塩基性化合物の正電荷を中和する効果も期待できるため、4級アンモニウム塩などの分離の時には有効な添加剤となります。
(参考文献:逆相高速液体クロマトグラフィー 東京化学同人)
順相モードでは、通常、2種類以上の有機溶媒の混液(n-ヘキサンとエタノール等)を移動相とします。より極性の高い溶媒の比率を高くすることで、保持を小さくすることが可能です。逆に、より疎水性の高い溶媒の比率を高くすることで、保持は大きくなります。
イオン交換モードでは、イオン交換作用の他、結合している官能基の構造によってスペーサーなどの影響で疎水性相互作用により分離が達成されます。したがって、イオン交換モードでは、塩濃度、pH,有機溶媒比率で保持を調整します。塩濃度が高いほど、有機溶媒濃度が高いほど保持は小さくなります。pHは、イオン交換モードが働くように、サンプルのpKaや官能基の種類によって設定します。
イオン交換モードでの条件設定で特にご注意いただく点は、次の3点です。
有機溶媒は、メタノールでもアセトニトリルでも充填剤としては問題ありません。分析目的化合物によって適している溶媒は異なりますのでご検討ください。塩を含む移動相となるため、カラム内で塩の析出が起こらないようくれぐれもご注意ください。
緩衝液を用いる場合の注意点をまとめました。
以下の手順で行ってください。
それぞれの行程で充分通液を行なってください。なお、オートサンプラーの洗浄液も上記2~4の順に(オートサンプラー洗浄液は塩を含まない溶液ですので、1の行程は省略してください)置換してください。
NH2カラムは、使用する移動相によりイオン交換モードにもHILICモードにもなるカラムです。NH2カラムを安定的にご使用いただくためにも1本のカラムでの分離モードの共有は避けてください。特に、一度、酸性条件下でイオン交換カラムとして使用したNH2カラムは充填剤表面の状態が出荷時とは異なる状態となりますので、その後、HILICモードで使用されるとピークがブロードになったり、テーリングしたりする傾向があります。
HILICモードでは親水性の固定相表面に水和相が形成され、試料の分配は移動相と水和相の間で起こります。水和相の形成のため、移動相には、水溶液 / アセトニトリルを用います。移動相中のアセトニトリル比率を上げることで極性化合物の保持を大きくすることができます。なお、HILICモードは、アセトニトリル70%以上で発現するといわれています。移動相のアセトニトリル比率は70%以上97%未満で設定してください。
前処理カラムにCAPCELL PAK MF Ph-1あるいはC8を用いた場合には、薬物の保持は疎水性相互作用によるため、基本的にはC18カラムと同様のメカニズムで保持されます。タンパクのピークと重なってしまう場合には、MFカラムで薬物が十分に保持されていない可能性があります。移動相中の有機溶媒の濃度を下げていただくことで、薬物の保持は大きくなり、一方、タンパクはサイズ排除モードにて保持の変動はほとんど起こらず、分離される傾向にあります。CAPCELL PAK MF SCXをお使いの場合には,移動相中の有機溶媒の濃度を下げる他、緩衝液の塩濃度を下げることで薬物の保持を大きくすることができます。また、カラム長を長くすることも分離には有効に働きます。
汎用カラムの測定結果をセミミクロカラムで再現するには、流速をカラムの断面積に比例して減少させて設定します(線速度が同じになるようにします)。ピーク高さは、カラムの断面積に反比例して大きくなりますので、サンプル注入量で調整します。なお、2.0mmより小さな内径のセミミクロカラムを使用する場合には、装置のデッドボリュームの影響を受けやすくなりますので、セミミクロ対応装置を使用する(セミミクロカラム用セルへの交換するなど)、配管径を小さくするなどの対応も併せて行います。
同じ条件で分析できます。現在ご使用のカラムと充填剤の特性が異なる場合には、カラムの特長に合せて、若干、移動相の有機溶媒の比率等の微調整が必要なことがありますが、基本的には同じ移動相をベースにご検討ください。
HPLCでは、15 MPa以下10 MPa程度とお考えください。また、分析中の圧力の大きな変動は、カラム・装置への負担が大きく、カラムの早期劣化にも繋がりますのでできるだけ圧力変動が少ない分析条件の設定をおすすめします。また、最近は、高耐圧に設計された装置・カラムもございますので、ご使用前にお使いになられる装置・カラムの耐圧をご確認の上、それを超えない範囲でご使用ください。
移動相が液路内で気化しない範囲であれば測定は可能です。アセトニトリル、メタノール等を移動相とする場合には上限60℃くらいを目安にしてください。ただし、アルカリ性や酸性条件では、高温にするとカラム劣化が早まる傾向にありますのでご注意ください。
内部標準物質としては、安定であること、分析対象物質と保持が近いこと(望ましくは分析対象物質より保持が大きいこと)、マトリックス中に存在している可能性がないことという条件を満たした化合物が適しています。選定の方法としては、同じような移動相組成で分析しているアプリケーションデータを検索し、そこで分析されている化合物を参考にされることをおすすめします。
トリエチルアミン等のアミンを十分に脱気した移動相に添加し、pHを調整してください。なお、炭酸アンモニウムとアンモニア水系の緩衝液ならエバポレーターで除去できるといわれています。